扉座「紺屋高尾(こうやたかお)」(千穐楽)に行ってきた。

というわけで、「紺屋高尾」2回目の観劇として、今日の千穐楽公演に行ってまいりました。

いやー、なんか今日は小田急がgdgdで、開場に間に合うくらいの時間に出たのに、開演3分前に駆け込みましたよ…。いや、間に合って良かったけども、開場直後に入ってきた人が結構いたのは、小田急沿線の方だったのかなーとか思ってみたり。

というわけで、今日が大千穐楽だったので、ネタバレ気にしないモードに突入です。

まず、物語の中では現在の時系列と、過去の時系列が(回想シーンとして)並行して流れます。

物語は現在から始まります。ファッション誌に靴屋の一人娘、ひびき(高橋麻理)が新進気鋭の靴職人として紹介され、靴屋の主人(有馬自由)は大事なお客が来るからと、職人に外で食事をしてくるようにと言いつけている。そのお客とは、かつては国民的プリンセスといわれた芸能人、光川ルビィ(賀来千香子)だった。

ルビィが来ると聞いて、仏壇が揺れだし、そこからルビィの大ファンで靴職人だった久作(酒井敏也)が飛び出してくる。それを追いかけて、靴屋の先代親方(岡森諦)、先代親方の娘で今の主人の妻(伴美奈子)、第二次大戦の南方で散った先代親方の大叔父(犬飼淳治)が出てくる。

えー、仏壇から出てきたということでおわかり頂けるとおり、この4名は現在1の時点で故人です。現在の人達を故人が見守るという構図なんですね。

ルビィと、その付き人のヒデ(ラッキィ池田)がやがてやってきて、久作との関わりを話し始める。久作が熱心にルビィの古いブロマイドを探していたために、ブロマイド屋からかつてルビィの付き人をしていたヒデに報せがいった。ヒデは久作の純朴さと、ルビィへの想いの強さから、久作をカモにしようとしたことから始まった不思議な関係だった。

現在の話は、久作が不慮の事故でなくなって、ルビィが訪ねて来る話。過去の話は、ルビィと久作がどんな関係であったのかを説明する話です。

まぁ、あらすじはこのくらいでやめておきますが、まさに人情噺という風情ですね。

1回目のネタバレに気をつけた観劇感想で、落語の紺屋高尾を現代の置き換えた話だと思うと肩透かしってことを書いたんですが、これは恋愛関係の構図が落語とは違うからなんですね。

久作はもちろん、ルビィにものすごい憧れているわけですが、恋愛感情(に似た想い)を持っているのは、ルビィではなく、ひびきに対してで、ルビィに自分の靴を履いて欲しかったのも、靴職人として急激に成長しているひびきに対するアピールのためだったのですね。なので、最初に見える構図こそ、紺屋高尾なんですが(実際、劇中でも「これは紺屋高尾ですね」と言われるんですが)、最終的には違う話なのです。

人間の他人に対する想いを仮に矢印で表現したとしたら、この話はものすごくいっぱいの矢印が描けます。ルビィに関するものだけでも、久作のルビィへの憧れ、ルビィの息子(松本亮)への愛情、ヒデのルビィへの恩義、友人好子(中原三千代)のルビィへの友情、そういうそれぞれの想いが、きちんと劇中で表現されているのですね。

なんかもうね、中盤からずっとじんわりと泣けるんですよ。ルビィの息子に対する気持ち、ひびきの久作に対する気持ち、主人から娘(ひびき)への気持ち、そういうのがずっと続くので。ここまで、人の想いを客席にぶつけ続ける芝居もそうそうないと思います。

最後に久作が作った靴が見つかって、ルビィがそれを受け取りにくるのですが、仮縫いした訳でもないのに、ぴったりと足にはまるのです。そして一言「まるでシンデレラの靴みたいだわ」と。そして、靴屋の人間(故人も含めて)がみな「ありがとうございました」と頭を下げるラストシーンは、もう本当に来るものが…。

今回は2回目だったので、色々細かいところも気付けて楽しかったですね。冒頭ひびきの話が出ると、とても誇らしげな顔をする先代親方とか、ルビィがやってきたときに、見える訳がないのに、後ろで盛んに小指を差し出す久作(久作は靴を作る約束をしたときに、ルビィと指きりをしたのです)とか、あぁなるほどと思わせるものがたくさんありました。こういうのも芝居の楽しみですね。

メインに近い役者さんについて、ルビィ役の賀来千香子さん。小劇場芝居は初めてだそうで。先日まで帝国劇場に出てたわけですから、その差はすごいもんですが(苦笑)。すごい存在感ですなー。物理的にもすごい背が高い方なんですね。本性のやさぐれっぷりと、表のルビィの顔とのギャップが素晴らしかったですw

久作役の酒井敏也さん。なかなかにすっとぼけた役です。純朴な男なんですが、ある意味頑固な人ですね。でもそのとぼけた感じがほっとさせてくれるところで、張り詰めたシーンでも酒井さんが出てくると弛緩するような、そんな役割ですね。

ヒデ役のラッキィ池田さん。今回がストレートプレイは初挑戦とのことですが、難しい役なのにほんと違和感なかったですね。ヒデってのは、色々やらかしてしまう人で、でも、何か憎みきれない、不思議なバランス感覚を持っているという役です。そういう印象がきっちり伝わってくるんですね。

ひびき役の高橋麻理さん。とにかく職人気質というか、靴のことが大事というキャラですね。先代親方の遺伝子を一番濃く継いでいる人というか。果たして久作への想いはどういう想いだったんだろうか。この人の声、なんか好きなんだよなぁ…。

先代親方役の岡森諦さん。岡森さんのこういう役はいいですね。ひびきと声を重ねて「職人は名前を売らずに仕事を売るもんだ」ていうセリフとか、もう感極まるものが。あとは、ルビィのために作った靴が見つかった、それを見て「いい仕事だ」と久作仕事を初めて褒めるシーンとか、もうね。

今の親方役の有馬自由さん。どうしても、この人は中間管理職に見えてしまうんだなぁ(苦笑)。信用金庫勤めから婿養子で入って靴職人になったという役なので、まぁいつもの印象通りといえばそうなんですが。亡き妻との思い出を語っているところ、ぐっときます(そんなんばっかりや)。

繰り返しになりますけど、本当に暖かい気持ちになる芝居でした。なんというか、こんなにも人間は色んな人の情に支えられて生きているものかと思える内容です。刺激的なところはそれほどない、まったりとした芝居ですけど、こういうものを、この扉座30周年の締めくくりで、また激動の2011年の締めくくりに上演されたことは非常に意味のあることであったのではないかと。

千穐楽ということで、最後の挨拶に立った横内さんいわく「当たり前のようにこうして30年芝居を続けてきたが、この当たり前のことというのが、とても大変なことだったんだなということがよくわかった一年であった」と。確かに、当たり前だったと思ったことが、色々ぶっ壊れた一年ではあったなぁ。

でも、年の最後にこんな芝居が見れるなら、人生捨てたもんじゃないよねぇと素直に思えた一日でした。
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テーマ : 演劇・劇団
ジャンル : 学問・文化・芸術

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不惑に到達したナンチャッテSE職。日常や、アイマス・サクラ大戦・芝居・落語など、趣味のことを適当に書き綴ります。
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